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宮崎地方裁判所 昭和40年(わ)170号 判決 1967年11月29日

(一)本店の所在地

宮崎市江平町三丁目四七番地

九州商事株式会社

右代表取締役

五百木喜久夫

(二)本籍

宮崎県西都市大字三宅三、〇三五番地の三

住居

宮崎市船塚町三八九番地の一

会社役員

五百木喜久夫

大正一〇年一〇月二五日生

右両名に対する法人税法違反被告事件について当裁判所は検察官安部利光出席のうえ審理し次のとおり判決する。

主文

1  被告九州商事株式会社を罰金一五〇万円に、被告

人五百木喜久夫を罰金二〇万円にそれぞれ処する。

2  被告人五百木喜久夫が右罰金を完納することがで

きないときは、金二、〇〇〇円を一日に換算した

期間同被告人を労役場に留置する。

3  訴訟費用(証人日高貞敏に支給した分)は被告人

両名の連帯負担とする。

理由

(罪となるべき事実)

被告九州商事株式会社は、宮崎市江平町三丁目四七番地に本店を設け、燃料油、潤滑油、自動車用品等の販売を営業目的とする資本金二〇〇万円(本件当時)の株式会社であり、被告人五百木喜久夫は、右被告会社の設立以来代表取締役として同会社の業務一切を統括しているものであるが、

被告人五百木喜久夫は被告会社の業務に関し、法人税を免れる目的をもつて仕入価格の水増、計上、商品の売上脱漏、不動産売却益の過少計上、架空負債の計上等の不正な方法により、

第一、昭和三六年七月一日から同三七年六月三〇日までの事業年度における被告会社の実際の所得金額は一六、三八八、五八一円で、これに対する法人税額は六、〇八八、一一〇円であつたのにかかわらず、同三七年八月三一日所轄宮崎税務署長に対し、右事業年度における法人税の確定申告をするに際し、所得金額は六、二七八、九三七円でこれに対する法人税額は二、二四七、二七〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もつて不正の行為により同会社の右事業年度の前記正規の法人税額と右申告税額との差額三、八四〇、八四〇円を納付しないで逋脱し、

第二、昭和三七年七月一日から同三八年六月三〇日までの事業年度における被告会社の実際の所得金額は、七、五四六、七四七円で、これに対する法人税額は二、七六七、七四六円であつたのにもかかわらず、同三八年八月三一日所轄宮崎税務署長に対し、右事業年度における法人税の確定申告をするに際し所得金額は三八七、二五七円で、これに対する法人税額は一二七、七七六円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出しもつて不正の行為により同会社の右事業年度の前記正規の法人税額と右申告税額との差額二、六三九、九七〇円を納付しないで逋脱し、

たものである。

(証拠の標目)

判示事実全部につき

一、第一回公判調書中被告会社代表取締役五百木喜久夫、被告人五百木喜久夫の各供述部分

一、被告人五百木喜久夫の当公判廷における供述

一、五百木喜久夫(二通)、神田昌利(四通)、歳行久雄(二通)の検察官に対する各供述調書

一、検察官作成の四〇年八月二三日付「報告書」と題する書面

(以下「」書の書面については、「と題する書面」の記載を省略する)

一、押収してある法人税決定決議書一綴(昭和四〇年押第六九号の一)

判示冒頭の事実につき

一、登記官作成の商業登記簿謄本

一、神田昌利作成の「株式会社九州商事定款」

判示第一および第二の事実につき

一、第二回公判調書中証人板井寛の供述部分

一、五百木喜久夫(一〇通)、神田昌利(七通)、歳行久雄(三通)、竹本義友、岩下粛夫、秋吉兼幸、岡本薫の大蔵事務官に対する各供述調書(質問てん末書)

一、五百木喜久夫、歳行久雄(四通)、川村度支郎作成の各「上申書」

一、検察官作成の昭和四〇年八月二〇日付「報告書」

一、近藤守夫、桜井礼三、小田義弘作成の各「証明書」

一、五百木喜久夫、川村度支郎、戸高兼義作成の各「確認書」

一、板井寛作成(三通)の各「報告書」

一、畑迫年生作成の「車両販売台帳写」

一、藤元淳作成(二通)の各「売上元帳写」

一、水間裕次郎作成(二通)の各「貸付元帳写」

一、板井寛作成の「建築業者志多組が施行した給油所、建物、防火壁および舗装工事の単価計算表の提出について」

一、近藤守夫(三通)、日本勧業銀行宮崎支店作成の各「普通預金元帳写」(長友利男、山本正男、原田正夫、清田利男関係)

一、五百木喜久夫作成の「簿外定期及び普通預金について」

一、押収してある金銭出納帳五冊(昭和四〇年押第六九号の二ないし六)、総勘定元帳五綴(同五号証の七ないし一一)、給油所建設勘定帳一綴(同号証の一四)、現金出納簿一冊(同号証の一七)、車両台帳一枚(同号証の一八)、別口個人貸付借用書綴一綴(同号証の二一)、貸付金メモ帳一綴(同号証の二二)、不動産関係領収書綴一綴(同号証の二八)

判示第一の事実につき、

一、神田耕三朗(二通)、坂田和男、戸高兼義の大蔵事務官に対する各供述調書「質問てん末書」

一、小森美智雄の検察官に対する供述書

一、登記官作成の各土地登記簿謄本(五通)

一、大野英治作成の「売掛帳写」

一、山下弘巳作成の「確認書」

一、阪口仲雄、宮崎電話局長作成の各「証明書」

一、関貞夫作成の各「売上伝票写」(二通)

一、酒井金之助作成の「禀議書写」(給油所用地購入の件)

一、押収してある車両台帳二綴(昭和四〇年押第六八号の一九、三八)期末修正伝票綴一綴(同号の三七)

判示第二の事実につき

一、都築一生、田村吾平次、黒木久三郎、岡崎勉、門川庄次郎、川島善被、山口篤、横山人見、猪股康治、藤本康三郎の大蔵事務官に対する各供述調書「質問てん末書」

一、近藤守夫、日本勧業銀行宮崎支店作成の各「普通預金元帳写」(松田義美、五百木喜久夫)

一、宮崎県労働金庫作成の「定期預金元帳写」

一、川村度支郎作成の「回答書謄本」

一、関貞夫作成の「売上伝票写」

一、酒井金之助作成の「禀議書写」(給油所サインポール建柱出資支給の件)

一、織田順二作成の「預り金勘定元帳」

一、川村度支郎作成の「得意先元帳写」

一、五百木喜久夫作成の「固定資産関係元帳写」

一、押収してある債権債務補助簿一綴(昭和四〇年押第六九号の一三)、忘備録一冊(同号証の一五)、未払金勘定帳一綴(同号証の一六)、重要書類綴一綴(同号証の二七)、大学ノート一冊(同号証の二九)、当用日記二冊(同号証の三〇、三一)、決算資料綴一綴(同号証の三二)、棚卸表二六枚(同号証の三三)積立金計算書(同号証の三四)、売買契約書一通(同号証の三五)、期末修正伝票綴(同号証の三七)

(弁護人の主張に対する判断)

弁護人は、本件については、修正申告が被告人らからなされているのであつて、右修正申告において脱税の意思を有しないことを明らかにしている以上逋脱犯は成立しないか、少なくとも中止未遂として刑の減軽さるべき場合に該すと主張するが、法人税逋脱の目的をもつて虚偽過少の申告書を提出し、納期を経過した時点において逋脱罪が既遂となると解すべきであるから(昭和三六、七、六、最高裁判決、最高裁刑集一五巻、七号一〇五四頁参照)その後仮に、修正申告書を提出し不足税額を納付したとしても犯罪成立後の一情状としては格別逋脱罪成立に消長は来たさず未遂をもつて論ずる余地はないと考えられるから弁護人の右主張はこれを採用しない。

(法令の適用)

被告人五百木の判示各所為は、いずれも法人税法(昭和四〇年法律第三四号、以下新法という。)付則第一九条、右法律により改正される以前の法人税法(昭和二二年法律第二八号、以下旧法という。)第四八条第一項、第二一条第一項に該当するので、所定刑中罰金刑を選択し、右は、刑法第四五条前段の併合罪であるから同法第四八条第二項により各罪所定の罰金の多額の合算額の範囲内で被告人を罰金二〇万円に処し、被告人が右罰金を完納することができないときは同法第一八条により金二、〇〇〇円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置し、被告人が代表者として被告会社の業務に関して判示各所為をなしたので新法付則第一九条、旧法第五一条第一項、第四八条第一項、第二一条第一項、刑法第四五条前段、第四八条第二項に従い、各罪所定の罰金の多額の合算額の範囲内において被告会社を罰金一五〇万円に処し訴訟費用については、刑事訴訟法第一八一条第一項本文、第一八二条により被告人両名に連帯して全部負担させることとする。

よつて、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 筒井英昌 裁判官 岩井康倶 裁判官 松村恒)

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